2023年5月9日
相続税の計算方法と控除や特例控除、不動産売却を踏まえて
相続とは、相続開始の日から亡くなった人が所有していた財産及び一切の権利と義務を受け継ぐことです。
日本の国内に住所がある相続人は、相続財産がどこにあるかを問わず、すべての財産について相続税がかかります。
相続税は、相続や遺贈によって取得した財産および贈与により取得した財産の価額の合計額が基礎控除額を超える場合には、その超える部分に対して課税されます。
そして、課税される場合は、相続税の申告および納税が必要となり、期限は被相続人の死亡したことを知った日の翌日から10か月以内となります。
基本的な相続税計算方法
多くの方は相続税の申告書を作成したことがないのではないでしょうか。
相続税の申告書を作成するのは相続で財産を引き継ぐ時なので、一生のうち相続税の申告書を作成するのはそんなに多くありません。
そのため、相続税の計算は難しくて、よく分からないと考えている方は多いかと思います。
しかし相続税の計算はそこまで難しいわけではありません。
相続税の計算方法が分かると、どのような相続対策をすればいいのか、どのくらいの対策をすればいいのかということが分かってくると思います。
1.相続財産の総額を算出する
相続財産の総額(正味の遺産額)を算式により計算します。
正味の相続財産とは、把握した相続財産の評価を基に、本来の相続財産であるプラスの財産から葬儀費用や債務等のマイナス財産を差し引いて、さらに、みなし相続財産や贈与財産(相続開始前3年以内)等を加算した金額のことです。
(相続財産―非課税財産+相続時精算課税にかかる贈与財産)―債務及び葬式費用+相続開始前3年以内の贈与
2.基礎控除の額を計算して、相続財産の総額と比較する
基礎控除とは、相続税の非課税枠のことで、「3,000万円+法定相続人の数×600万円」で計算します。
正味の遺産額がこの基礎控除を超えた場合には相続税の申告が必要となります。
3.課税遺産総額を法定相続分で分け、相続人それぞれの税額を算出し、相続税の総額を求める
相続財産の総額から基礎控除の額を差し引き、申告義務がある場合は相続税を計算します。
相続財産の総額から基礎控除の額を差し引いたものを「課税遺産総額」といいます。
課税遺産総額を法定相続分で按分し、それぞれの金額に税率を乗じて、各人の相続税を算出し、それを合計して相続税の総額を求めます。
4.相続税の総額を実際の相続割合で分ける
相続税の総額を、各相続人の実際の相続割合に応じて振り分けます。
相続税の負担額は、相続人が実際に相続した財産の割合に応じて割り振られます。
5.各人の相続税額から税額控除を行う
相続税の税額控除とは、相続人の性質に応じて、相続税の額から一定の額を差し引ける(控除できる)という制度です。
各相続人の相続税の額から税額控除を行うことで、最終的な相続税の額が確定します。
相続税の総額×(各相続人が相続する課税価格÷課税価格の合計額)-税額控除=各人の実際の相続税額
相続税の税控除について
相続税の税額控除とは、相続人の性質に応じて、相続税の額から一定の額を差し引ける(控除できる)という制度です。
各相続人の相続税の額から税額控除を行うことで、最終的な相続税の額が確定します。
・配偶者控除
配偶者控除の適用を受けると、配偶者は財産の取得金額が1億6,000万円までであれば相続税はかからず、超過する場合でも法定相続分までは相続税の課税対象となりません。
・未成年者控除
未成年者控除の適用を受けると未成年の相続人がいる場合、相続税額から一定の金額が控除されます。
控除される金額=(18歳-現在の年齢) × 10万円
・障害者控除
障害者控除の適用を受けると相続人が障害者の場合、一定の金額が控除されます。
障害者の控除額は相続が発生したときから、満85歳になるまでの年数を基準にして計算をします。なお「一般障害者」と「特別障害者」では控除額に違いがあり、特別障害者のほうが控除額が高く設定されています。それぞれの控除額の計算式は以下の通りです。
一般障害者(85歳までの年数 × 10万円)
特別障害者(85歳までの年数 × 20万円)
・相次相続控除
相次相続控除とは前回の相続を受けてから10年以内に相次いで相続が発生した場合に適用されます。
相続税で利用できる主な特例2つ
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは被相続人と一緒に住んでいた土地を相続する際に利用できる特例です。宅地の相続税評価額を最大80%まで減額できます。
この特例は、土地を相続したことで相続税を払えずに、住む場所がなくなってしまうことを防ぐ目的があります。
土地の評価額は高額なケースが多いため、相続税も高額になります。相続税の支払いのために住む場所がなくなってしまわないように設けられているのです。
特例が適用される条件は、土地の用途によって3種類に分かれています。
1.特定居住用宅地等(住宅で使っている土地)
特定居住用宅地等とは、亡くなった人または亡くなった人と生計を一にする親族が住んでいた土地のことです。
土地の面積330㎡までの部分について、評価額が80%減額されます。
2.特定事業用宅地等(事業をしていた土地)
特定事業用宅地等とは、亡くなった人やその生計一親族が事業を行っていた土地のことです。
土地の面積400㎡までについて、80%減額されます。
3.貸付事業用宅地等(貸している土地)
貸付事業用宅地等とは、亡くなった人やその生計一親族が貸している土地のことです。
土地の面積200㎡までについて、50%減額されます。
4.納税猶予の特例(農地等の納税猶予制度)
日本の相続税は高額のため相続税の支払いが困難になるような状況があります。
特に農業で使われる農地は非常に面積が広いため、税額が高く支払いができないケースがあります。
そんなときに利用できるのが、農地を相続した際に相続税の支払いを先延ばしできる「納税猶予の特例」です。
不動産売却に関する事
不動産はいつ売るのがベストなのでしょうか。
不動産を所有している方は、生前に売却するか、相続するかで迷われている方も多いかと思います。
では、相続前に売却するのと、そのまま相続するのでは、どちらの方がよりメリットが大きいのでしょうか。
・相続前に不動産を売却するメリット
そもそも相続税とは、死亡した人の財産を相続や遺贈によって受け取る人が納める税金のことを言います。
不動産は相続発生後の遺産分割協議において、その分割方法をめぐって兄弟間などで争いごとになるケースが見受けられます。
そのため、事前に売却して現金化しておくことにより、相続発生時に相続人の間で分けやすく、トラブルになり難いというメリットがあります。
・相続後に不動産を売却するメリット
不動産を相続人が相続し、「相続税の申告期限である相続開始から10ヶ月後の翌日から3年以内」にその不動産を売却した場合は、譲渡所得の計算において、支払った相続税のうち、その不動産にかかる部分の相続税を「取得費」として加算できるという特例制度があります。これを「相続税の取得費加算」と言います。
そのため、相続した不動産をこの期間内に売却すれば、それによって発生する譲渡所得税を節税することができます。
まとめ
相続税は相続が発生する前に計算しておくことで、その分割の対策がしやすくなり、さまざまな手法や特例を利用し、節税効果を得られるようになります。
特に不動産の相続税対策は節税効果が高いだけでなく、被相続人が亡くなった後に残された家族の生活を支えてくれる方法です。
大切なご家族が安心して暮らしていけるためにも、事前の対策を行い最適な相続税対策を実践することが大切です。
最後になりますが、特例などの適用には、さまざまな条件があります。詳細については相続専門の税理士法人に相談してください。