2023年5月12日
空家問題・空家対策法を踏まえた活用方法
日本では空き家が増え続けており、この30年間で2倍以上に増加していると言われています。
この空き家が増え続けることには大きく3つの原因が考えられます。
1つ目は、日本全体として高齢化が進んだことで相続が増え空き家となる住宅が増加していること。
2つ目は、空き家所有者や相続で空き家を引き継いだ方が、管理や活用の面で問題を抱え活用できていないこと。
そして3つ目は、空き家の多くは高齢者が住んでいた自宅で、先祖から相続した土地であり実家であり、家族との想い出が詰まっているために、利活用することに抵抗があるという方が多いということです。
● 空き屋のまま放置することの問題点
空き家のままで適切な管理をせずに放置すると劣化が早く進みます。
放置され劣化が進んだ空き家は、家屋が痛むことで、外壁材や屋根材の落下、火災などによって通行人や近隣の家屋に損害を与えてしまう恐れがあります。
最悪の場合は「家屋の倒壊」といった状態になったり、損害賠償責任を問われる可能性もでてきます。
また「ごみの不法投棄」など地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしたり、放置されている空き家があるだけで近隣地域の不動産の資産価値が下がる可能性も出てきます。
さらに、空き家が増えるということは、その地域の人口が減っていくということであり、地域の活力が低下する原因となってしまいます。
さらにそれだけではなく、空き家を売らずに放置すると、行政から差し押さえられる恐れもあります。
2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」、通称「空家法」が成立しました。
この空家法は、自治体による空き家の実態調査や、空き家の所有者への指導、空き家の柔軟な転用や活用ができるように定めたものです。
自治体が周囲への危険や景観を損ねる空き家を「特定空家」と定め、問題となっている空き家の立木伐採や住宅の解体撤去などについて、助言・指導・勧告・命令をしたり、行政代執行(強制執行)することが可能となり、所有者が不明な空き家の処分を行政でできるようになりました。
行政から指導などを受けてもなお放置を続けた場合は過料を受けることがあります。
さらに放置を続けた場合、最終的には行政代執行が行われ、 強制的に建物が解体されてしまうこともあるのです。
その解体にかかった費用は所有者に支払いの義務が生じるので、建物を失うだけではなく多額の支出も発生してしまいます。
● 空き屋の活用について
空き家の多くは、相続が原因で発生しています。
相続により誰も実家に住まなくなった場合、その活用をどうするかの方針が決まらないケースが多いようです。
なぜなら、遺産分割や相続登記、家財の片づけ、遺品整理など問題が山積みで、家の活用まで検討して行動に移すことは、とても難しいことだからです。
しかし、空き家を発生させたり放置したりしないためには、空き家を「売る」「貸す」「使う」などの方針を決め、実行に移すことが重要なのです。
空き家を活用すると言っても、実際に行動に移すのは簡単ではありません。
そこで、国や自治体では空き家対策のためにいくつかの支援策を講じています。
空き家を所有していて、あるいは、空き家を相続する予定がある、何とかしたがどうしたらいいか分からない、何からすべきなのか分からない、どこに相談すればいいのか分からない、などのお悩みなどがある場合は、まずは自治体に相談をしてみてはいかがでしょうか。
● 空き屋の売却について
空き家を相続しても、「空き家の管理が難しい」、「損害賠償などのリスクを避けたい」、「固定資産税が高い」と考えている方は多く、このような理由から空き家の売却を選択される方も多くいます。
売却することのメリットとしては、売却の手続きに手間がかからない、お金の持ち出しがないこと、現金化することで遺産分轄しやすいといったことがあげられます。
相続後の空き家に時間やお金をかけたくない、手間なく活用したいという方にはお勧めの方法なのです。
● ライフスタイルの変化
新型コロナウイルスの影響で日々の仕事がテレワーク中心になった方も多くいます。
テレワークへの移行は、住宅選びにも影響を及ぼしています。コロナ前には、多くの方の住宅選びの基準は「都心・駅近」のアパートやマンションでした。
もちろん今もこの基準は健在です。
しかし「毎日出社する必要がない」という生活になった方にとっては、従来とは異なる動きも見え始めています。
通勤時間や駅からの距離などの交通利便性を重視する傾向が薄れる一方で、地方で住み心地を重視する人が増えているのです。
また、単身用のマンション・アパートを仕事用に活用される方が増えてきました。プライバシーを保ちながら暮らせる、共用施設やアメニティを利用できる、セキュリティが強化されているなどの利点で、郊外のマンション・アパートの価値が見直されてきています。
このように住宅の需要に対する大きな変化により、戸建てやマンション・アパートを希望する人が増えたことで、空き家を買い取ってリフォームして販売する、空き地を活用して新たなマンション・アパートを建設して販売する会社が増加しました。この結果、現在は空き家の需要が大きく伸びている状況なのです。
● 空き家売却の対策
空き家売却の対策として、自治体による「空き家バンク」という制度があります。
自治体が仲介者となって、空き家の売却や部屋貸しの希望者と購入・賃貸希望者の需給マッチングを行ない、自治体ホームページ等で物件情報を公開してるのです。
不動産価格が低く、業者による仲介が難しい地域での不動産取引の支援策として貢献する狙いがあり、提供したい空き家がある場合、リフォーム等を通じて買い手・借り手が使いやすい状態にすることで、取引がよりスムーズに運びます。
そのほか自治体によっては住戸のリフォームや解体費用の助成金、使用していない住戸の借り上げ・寄附受け付けといった、空き家対策に活用できる諸制度を用意しています。
さらに、空き家の売却に大きな追い風となっているのが、国土交通省が法律で定めた「空家等対策の推進に関する特別措置法」です。
相続で取得した空き家を売却するとなっても、売却時に多額の税金が発生するのでは、スムーズに売却に踏み切ることはできません。
国土交通省では空き家対策の一環として、相続した空き家、または建物取壊し後の土地を売却したとき特別控除の対象とする法律を定めました。
本来ならば空き家を売却した際の不動産売却所得は課税対象になりますが、この法律では、相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。
● 空き家を売却するメリット
空き家を売るメリットは、売却代金として現金を手に入るということです。
物件によっては数千万円のお金が口座に入ってきます。お金に余裕があれば、そのお金で自宅を買ったり投資を始めたりすることができます。
また、売却により空き家を手放してしまえば、定期的に通って掃除をしたり、災害が訪れる度に様子を見に行ったりする必要がありません。
このように空き家を管理する手間から解放され、家族との時間やお子さんの教育、趣味等の時間を増やすことができます。
固定資産税や住宅の修繕費といった維持管理費用も不要になり、金銭的な負担から解放されるのは大きなメリットと言えます。
● 賃貸経営
自宅や実家の売却に大きな精神的負担を伴う方も多くいます。それは家族との想い出が詰まった家を売却することに罪悪感を抱く方が多いためです。また、先祖代々の土地を守りたいという方も多くいます。そんな方には、空き家をマンション・アパートの賃貸経営として活用するという方法もあります。
マンション・アパートの賃貸経営には、以下のようなリスクとメリットがあります。
リスク:
管理の負担:マンション・アパートの賃貸経営では、共用部分の管理や入居者とのトラブル対応など、管理業務に関わる負担があります。適切な管理体制を整えない場合、入居者満足度の低下やトラブルの増加といった問題が生じる可能性があります。
空室リスク:入居者が常に満室であるとは限りません。マンション・アパートが需要の低い地域に位置していたり、競合物件が多い場合、空室率が上昇するリスクがあります。空室が続くと、収益が減少する可能性があります。
メリット:
安定した収益:マンション・アパートの賃貸経営は、複数の入居者からの家賃収入が得られるため、安定した収益を期待することができます。入居者が退去しても、他の入居者が居住し続けることで収益が維持されます。
長期的な資産価値:マンション・アパートは不動産資産としての価値があり、長期的な資産価値の向上が期待できます。需要が安定している場合や、土地の価値が上昇しているエリアに立地している場合は、将来的な資産価値の上昇が見込めます。
専門管理会社の活用:管理業務を専門の管理会社に委託することで、自身の負担を軽減することができます。プロの管理会社は入居者募集や施設の維持管理などを効果的に行い、賃貸経営の効率化を図ることができます。
● まとめ
コロナ禍などで空き家活用の需要が高まっている状況で、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が適用されるこのタイミングこそが、空き家を売却するメリットが大きいと言えます。
また、建物は年数が経過するほど老朽化します。周辺エリアの再開発と言った外部要因があれば上昇する可能性もありますが、基本的には空き家は経年と共に価値が下がってしまいます。
価値が下がると売却価格にも影響が出たり売れにくくなったりしますので、早めの売却を検討した方が良いと言えるでしょう。